糸リフトやハイフを何度か受けてきた方から、「同じ施術を繰り返すことに区切りをつけたい」というご相談をいただくことがあります。
一方で、すでに切開リフト(フェイスリフト手術)を受けた方から「あのときの効果が薄れてきたが、もう一度受けてもよいのだろうか」と質問されることも少なくありません。
どちらの方にも共通しているのは、目の前の1回ではなく、これから先の顔の変化まで見据えて考えたいというお悩みです。
顔のたるみは、皮膚だけの問題ではありません。
皮膚、脂肪の分布、SMAS(スマス/表在性筋腱膜系:皮下脂肪の下にあり、表情筋を包み込むように広がる薄い膜状の組織)を含む支持組織、支持靭帯(皮膚やSMASなどの軟部組織を骨や深部に固定している線維組織)、そして骨格の変化が複合して進みます。
手術によって組織の位置を整えても、加齢そのものが止まるわけではないため、時間の経過とともに再びゆるみを感じる方がいらっしゃいます。
ここで多くの方が突き当たるのが、「切開リフトは何回まで受けられるのか」「2回目はいつがよいのか」という疑問です。
この問いには、回数の上限を数字で示すような単純な答えはありません。
ただし、国内外の形成外科・美容外科の領域では、再手術の実際の間隔や合併症の頻度について一定の報告が積み重ねられており、判断の手がかりになる情報は存在します。
そこで本記事では、切開リフトの回数に医学的な制限があるのかという前提から、2回目を検討する適切な時期の考え方、再手術で難易度が上がる解剖学的な理由、報告されているリスク、過去に受けた施術が次の手術に与える影響までを、順を追って解説します。
回数を重ねること自体を勧める内容ではなく、ご自身の状態に照らして冷静に判断していただくための材料としてお読みください。
【記事執筆】福岡天神美容クリニック 院長 小林直樹
切開リフトは何回まで受けられるのか

まず結論からお伝えすると、切開リフト(フェイスリフト手術)について、「何回まで」という一律の回数上限を示す標準的な医学的基準は確立していません。
ただし、これは何度でも同じように受けられるという意味ではなく、実際には身体の側の条件が上限を決めていきます。
ここでは、回数を規定しているものが何なのかを整理します。
一律の回数上限を示す医学的基準は確立していない
切開リフトは、耳の前後や生え際など傷跡が目立ちにくい位置を切開し、皮膚とその下の組織を剥離(はくり:組織の層を分けて持ち上げる操作)したうえで、SMASなどの支持組織を移動・固定し、余剰となった皮膚を処理する手術です。
2回目、3回目の手術が検討される例は国内外にありますが、それは無条件に繰り返せるという意味ではなく、皮膚や瘢痕、血流、前回の術式、全身状態などを踏まえた個別の判断が前提になります。
一方で、「制限がない」ことと「何度受けても同じ結果が得られる」ことは別の話です。
手術のたびに組織の状態は変化し、次に手術を行う際の条件も変わっていきます。
回数を考えるときは、上限の有無ではなく、「今のご自身の組織に、次の手術を安全に行うだけの余地があるか」という視点で見ていく必要があります。
回数の制約になるのは皮膚・瘢痕・血流などの複合的な条件
再手術で安全に切除・移動できる範囲は、単一の要素ではなく複数の条件の組み合わせで決まります。
過去にどれだけ皮膚を切除したか、現在の皮膚のゆるみと質はどうか、皮下や深部に生じた瘢痕(はんこん:傷が治る過程でできる硬い線維組織)や癒着がどの程度か、血流はどうか、前回どの術式で何が行われたか、そして全身状態はどうか、といった条件です。
読みやすさのために「皮膚の余力」という言い方をすることがありますが、これは決まった量を手術のたびに使い切っていくような単純な仕組みではありません。
時間が経てば加齢によるゆるみが再び生じますし、瘢痕や血流の状態も一人ひとり異なります。
それぞれの詳しい仕組みは、このあとの章で順に説明します。
これらは検査値のように一律の基準で測れるものではなく、実際に診察して皮膚のつまみ具合、可動性、過去の傷跡の状態を確認したうえで判断する領域です。
同じ年齢・同じ手術歴でも、クリニックによって適応の判断が分かれることは珍しくありません。
報告されている実際の手術回数と年齢の傾向
参考として、米国の形成外科医による20年間の診療経験をまとめた報告があります。
この報告では、実施された800件以上のフェイスリフトのうち60件が2回目の手術で、そのうち10件がさらに3回目の手術に至っています。
初回手術時の平均年齢は51歳、2回目の時点では平均60歳でした(Rohrich RJ, et al. Plastic and Reconstructive Surgery, 2013)。
この報告からわかるのは、2回目、さらには3回目の手術が検討される例が実際にあるということです。
一方で、これは特定の術者による20年間の診療経験の集計であり、患者一人ひとりの生涯を追跡して「何回まで受けたか」を調べた研究ではありません。
したがって、このデータから一般的な生涯の手術回数や回数の上限を決めることはできません。
実際に何回受けられるかは個人差が大きく、診察での判断が前提となります。
2回目の切開リフトはいつ受けるのが適切か

回数と並んで多いご質問が、間隔の問題です。
「前回から何年空ければよいのか」という問いには、術後の組織が落ち着くまでに必要な最低限の期間と、たるみの再発を感じ始める時期という、性質の異なる二つの目安が関わっています。
ここではその両方を分けて説明します。
前回の手術から最低限あけるべき期間の考え方
再手術の時期に、すべての方に当てはまる一律の基準はありません。
ただし、たるみの再発に対する本格的な再手術については、腫れやむくみが引き、剥離した層に生じた瘢痕が成熟して安定するまでに時間を要することから、少なくとも1年程度を目安として個別に判断されることがあります。
術後まもない時期は組織がまだ変化の途中にあり、この段階で再度手を加えると、仕上がりの予測が立てにくくなるためです。
一方、左右差や傷跡など限定的な部分の手直しは目的が異なるため、状態に応じて別の時期が検討される場合もあります。
いずれの場合も、前回の手術内容と現在の組織の状態を確認したうえで、前回の手術を担当した医師または再手術の経験がある医師が個別に判断する事柄です。
初回の効果が続く期間と再手術までの実際の間隔
一方、たるみの再発を理由とした2回目の手術は、それよりもはるかに長い間隔で行われるのが一般的です。
先ほどの報告では、初回手術から2回目までの期間は平均でおよそ9.0年、2回目から3回目までは約7.5年でした。
数年単位ではなく、8~9年前後という長い間隔で次を検討している方が多い、という傾向が読み取れます。
もっとも、切開リフトの持続期間は術式、切開範囲、SMASや支持組織への処理の仕方、そして肌質や生活習慣によって幅があり、報告されている数字にもばらつきがあります。
効果が永久に続くものではありませんが、何年で戻るかを一律に予測することもできません。
切開リフトの長期経過や持続期間そのものについては、別の記事で詳しく取り上げていますので、あわせてご覧ください。
早すぎる再手術で起こりうること
十分な期間を置かずに再手術を行った場合、いくつかの点で不利になることがあります。
瘢痕が成熟していない段階では、組織の層を見分けにくく、剥離の際に想定外の深さに入る可能性が高まります。
また、皮膚の血流が回復しきっていない時期に広範囲の剥離を加えることは、創傷治癒不良(傷の治りが遅れること)のリスクにつながる可能性があります。
さらに、前回の効果がまだ残っている段階で皮膚を切除すると、必要以上に引きつれた印象になることもあります。
「効果が薄れてきた気がする」という感覚と、実際に組織が再度下垂しているかどうかは必ずしも一致しません。
術前後の写真の比較や診察所見を含め、手術による変化、その後の加齢による変化、そして当初の期待値を分けて確認したうえで判断することをおすすめします。
間隔を決めるときに確認したい項目
再手術の時期を検討する際、医師が確認する主な項目を表に整理しました。
ご自身で情報をそろえておくと、カウンセリングの精度が上がります。
| 確認する項目 | 具体的な内容 | 判断への影響 |
|---|---|---|
| 前回の手術時期 | 何年前に受けたか | 瘢痕の成熟度と組織の安定性 |
| 前回の術式 | 皮膚のみの引き上げか、SMASの処理を伴うか | 剥離の難易度と次に選べる方法 |
| 手術記録の有無 | 切開線の位置、剥離範囲、固定の方法 | 手術計画の立てやすさ |
| その他の施術歴 | 糸リフト、ハイフ、注入治療の機器名・回数・時期・部位 | 線維化の可能性や組織状態の推定 |
| 現在の全身状態 | 持病、常用薬、喫煙習慣 | 傷の治りと合併症のリスク |
| 気になっている部位 | 頬、フェイスライン、首、目の下など | 手術で対応できる範囲かどうか |
なぜ2回目以降は難易度が上がるのか

再手術が初回より難しいとされる背景には、明確な解剖学的な理由があります。
ここでは、組織に何が起きているのかを層ごとに整理します。
仕組みを理解しておくことは、医師の説明を正しく受け止めるうえでも役立ちます。
一度剥離した層に生じる瘢痕と癒着
初回の手術では、皮膚と皮下組織の間、あるいはSMASの周囲といった、比較的たどりやすい層を剥離していきます。
しかし手術後、剥離した面には瘢痕が形成され、本来は分かれていた層どうしが癒着した状態になります。
その結果、2回目の手術では層の境界が見分けにくくなり、剥離に要する時間が長くなったり、器具の進め方をより慎重にする必要が出てきたりします。
硬くなった組織は、引き上げたい方向へ素直に動いてくれないこともあります。
こうした条件の変化が、再手術の難易度を押し上げる大きな要因のひとつです。
皮弁の血流への配慮が必要になる理由
切開リフトでは、剥離して持ち上げた皮膚とその下の組織を皮弁と呼びます。
皮弁は周囲から血液の供給を受けており、その血流が保たれていることが、傷が順調に治るための前提となります。
一度手術を受けた部位では、血管の走行が初回とは変化している可能性があり、剥離の範囲や皮弁の厚みによっては血流に影響が出る場合があります。
程度は個々の状態によって異なるため、一律に「血流が悪くなる」と言えるものではありません。
剥離をどの範囲まで行うか、皮弁をどのように扱うかは、血流や瘢痕の状態に応じて術者が個別に計画します。
顔面神経とSMASの位置関係
顔の表情を動かす顔面神経の運動枝は、多くの部位でSMASより深い層を走行しますが、枝や部位によって走行や深さは異なります。
切開リフトでSMASを操作する際は、この位置関係を部位ごとに正確に把握しながら進める必要があります。
再手術では瘢痕によって層が不明瞭になっているため、この位置関係の見きわめがより難しくなります。
ただし、後述するように、再手術で顔面神経の損傷が増えたとは報告されていない研究もあります。
難易度が上がることと、合併症が必ず増えることは、分けて考える必要があります。
SMASや支持靭帯(皮膚やSMASなどの軟部組織を骨や深部に固定している線維組織)と切開リフトの関係については、こちらの記事で詳しく解説しています。
切除できる皮膚の量という物理的な制約
もうひとつ見落とされがちなのが、切除・移動できる皮膚の量という物理的な制約です。
過去の切除量に加え、現在の皮膚のゆるみや質、瘢痕の状態によって、そのときに安全に扱える範囲は変わります。
安全に扱える範囲を超えて引き上げを強めると、耳たぶが下方に引っ張られる、こめかみや生え際の位置が不自然に変わる、目尻や口元に緊張が出るといった変化が生じる可能性があります。
手術で得られる引き上げの量には限りがあり、その限界を正しく見積もることも、再手術における重要な判断のひとつです。
2回目以降の切開リフトで報告されているリスク

再手術に関する情報では、リスクが過度に強調されることも、逆に軽く扱われることもあります。
ここでは報告されているデータと、切開リフト全般に共通するリスクの両面から、できるだけ中立的に整理します。
研究で報告されている合併症の頻度
先に紹介した20年間の診療経験の報告では、2回目のフェイスリフトを受けた60例において、漿液腫、皮膚壊死、一時的な下顎縁枝(顔面神経の枝のひとつで、下唇の動きに関わる神経)の麻痺が各1例報告されており、合併症の発生率は約5%でした。
著者らは、この頻度が初回手術について報告されている水準と大きく異ならないと述べています。
ここで正確に押さえておきたい点が二つあります。
ひとつは、この報告が同一の研究の中で初回手術のグループと直接比較したものではないということです。
もうひとつは、頻度が低いとはいえ、一時的な神経の麻痺は実際に発生しているということです。
「回数を重ねるほど危険が増していく」という一般的なイメージがそのまま当てはまるわけではありませんが、リスクがなくなるわけでもありません。
またこれは、再手術の経験を積んだ術者が適切な手術計画のもとで実施した場合の成績であり、日本国内の症例を対象としたデータでもありません。
難易度が上がるという事実と、経験と計画によってリスクを管理しうるという事実は、両立します。
切開リフト全般に共通するリスクと合併症
回数にかかわらず、切開リフトも手術である以上、リスクを伴います。
主なものを表にまとめました。
| 分類 | 主な内容 |
|---|---|
| 頻度が比較的高いもの | 腫れ、内出血、痛み、むくみ、一時的な感覚の鈍さ、組織の硬さ |
| 傷跡に関するもの | 傷跡の赤み・硬さ、傷跡の広がり、耳周囲の形の変化、生え際の後退、切開部周辺の脱毛 |
| 早期に注意が必要なもの | 血腫(皮下に血液がたまる状態)、漿液腫(組織液がたまる状態)、感染、創傷治癒不良 |
| 重篤だが頻度の低いもの | 顔面神経の障害による表情の動かしにくさ、皮膚壊死 |
| 仕上がりに関するもの | 左右差、引きつれ、想定した効果が得られない、再手術が必要になる可能性 |
| 麻酔に関するもの | 局所麻酔薬による反応、鎮静に伴う呼吸抑制や血圧の変動、全身麻酔に伴う合併症 |
これらの発生頻度や程度には個人差があり、術式、剥離範囲、体質、術後の過ごし方によっても変わります。
腫れや内出血がどのくらいの期間続くかも一律ではなく、目立つ時期は数日から1~2週間程度と幅があります。
術後の経過やダウンタイムについては、こちらの記事で時期ごとに詳しく説明しています。
慎重な判断が必要な方・手術を見合わせる場合
次のような状態にある方は、切開リフトの適応を慎重に検討する必要があります。
妊娠中・授乳中の方、出血傾向のある方、抗凝固薬や抗血小板薬を服用中の方、コントロールが不十分な糖尿病などの持病がある方、ケロイド体質の方、喫煙習慣のある方などです。
抗凝固薬や抗血小板薬などの服用中のお薬については、自己判断で中断しないでください。
休薬の要否や時期は、処方している医師と手術を担当する医師が連携したうえで決める事柄です。
また、加齢に伴って皮膚の厚みや弾力、血流や傷の治りに関わる条件が変化することがあります。
ただし影響の程度には個人差があり、年齢だけで適応を判断するものではありません。
持病、栄養状態、喫煙歴、服薬内容、皮膚や血流の状態を含めて総合的に評価します。
切開リフトそのもののデメリットとリスクについては、判断材料としてこちらの記事にまとめています。
過去に受けた施術が次の手術に影響する

再手術の難易度を左右するのは、前回の切開リフトだけではありません。
糸リフトやハイフ、注入治療といった、切らない施術の履歴も条件に関わってきます。
ここでは施術の種類ごとに、どのような影響がありうるのかを見ていきます。
初回が皮膚だけの引き上げかSMASの処理を伴うかで変わる
同じ「切開リフト」と呼ばれる手術でも、内容には幅があります。
皮膚を切除して縫い縮めることを中心とした方法と、SMASなどの支持組織にまで操作を加える方法では、術後に生じる瘢痕の位置も深さも異なります。
皮膚の処理が中心だった場合、深い層は比較的手つかずの状態で残っているため、2回目でSMASへのアプローチを行える可能性があります。
一方、初回でSMASを広く処理している場合は、その層にも瘢痕が及んでいるため、剥離の計画をより慎重に立てる必要があります。
だからこそ、前回の手術記録が手元にあるかどうかが、実務的には大きな意味を持ちます。
糸リフトを繰り返した後の切開リフト
糸リフトは、糸を挿入して組織を支持・牽引する施術です。
挿入される層は糸の種類や術式、部位によって異なり、一概に「浅い層だけ」と単純化できるものではありません。
糸そのものが吸収された後も、挿入経路に沿って線維性の変化が残ることがあります。
吸収糸による糸リフトを2回以上受けた10名を対象とした後ろ向きの報告では、その後の切開リフトの際に、線維化(組織が硬い線維に置き換わること)、組織の変形、本来分かれているはずの層どうしの癒着、SMASの可動性の低下が観察され、剥離が難しくなる、手術時間が延びるといった影響が指摘されています。
この報告では、10例中7例で皮膚の収まりが不十分な状態やくぼみが見られ、1例で一時的な下顎縁枝の麻痺が生じたとされています(Aesthetic Plastic Surgery, 2025)。
ただし、これは10例という少数を対象とした報告です。
1回のみの糸リフトや、種類の異なる糸、すべての施術者・患者において同じ影響が生じることを示すものではありません。
これは糸リフトを否定するものではありません。
糸リフトと切開リフトは優劣で比べる治療ではなく、組織への働きかけ方が異なる治療です。
将来的に手術を視野に入れているのであれば、施術の回数や間隔について事前に相談しておくとよい、という趣旨で受け止めてください。
両者の違いについては、解剖学的な観点から比較した記事があります。
ハイフや注入治療の履歴をどう伝えるか
ハイフ(HIFU:高密度焦点式超音波)は、機器、カートリッジ、照射条件、照射部位によって、エネルギーが届く深さが異なります。
SMAS近傍の深さを対象とする設定が用いられることもありますが、切開リフトのように組織を剥離して移動・固定する施術ではありません。
加えられた熱によって組織に変化が生じている可能性はあるため、機器名、施術時期、照射した部位と回数を、わかる範囲でお伝えください。
ヒアルロン酸などの注入治療についても、注入された部位や量、時期を把握しておくことが手術計画に役立ちます。
いつ、どこに、どのくらいの回数受けたのかを整理して伝えていただくと、より安全な計画を立てやすくなります。
施術歴の共有が安全性を左右する
ここまで見てきたように、過去に受けた施術の内容は、次の手術の難易度と計画に直結します。
他院で受けた施術であっても遠慮なくお伝えいただくことが、重要な安全対策になります。
手術記録や説明資料が残っていれば持参していただき、残っていない場合でも、受けた時期と施術名、担当医から受けた説明の内容を覚えている範囲でお話しください。
情報が不足したまま手術に臨むことは、術中の判断を難しくする要因になります。
術式によって次の選択肢は変わる

「何回まで」という問いは、実は「どの術式を、どの順番で選ぶか」という問いと分かちがたく結びついています。
ここでは代表的な術式の性質と、回数との関係を整理します。
ミニリフトを繰り返す場合に考えておきたいこと
ミニリフト(ショートスカーリフト)は、切開線を短くし、剥離範囲を限定した方法です。
ダウンタイムが比較的短い一方、引き上げられる範囲や量には限りがあります。
ここで知っておきたいのは、限定的な手術を短い間隔で繰り返した場合、そのたびに皮膚が切除され、瘢痕も蓄積していくという点です。
どの範囲まで手術で対応するかは、現在のたるみの程度、許容できるダウンタイム、将来の見通しを合わせて検討する事項です。
SMAS法と深い層で操作する術式の違い
SMAS法とは、SMASを剥離して移動・固定する方法のほか、SMASの一部を切除したり縫い縮めたりして処理する方法も含む、皮膚だけでなく深部の支持組織にも操作を加えるフェイスリフトの総称です。
必ずしもSMASを広く剥離するとは限りません。
これに対し、より深い層で皮膚とSMASを一体のまま移動させる術式もあり、それぞれに特徴があります。
近年発表された系統的レビューでは、21件の研究・2,896例を対象に両者が比較され、深い層で操作する術式群の患者満足度は94.4%(95%信頼区間84.8~99.7)、SMAS法群は87.8%(同84.3~91.3)と報告された一方、合併症の発生率は前者が17.2%、後者が10.3%でした(Aesthetic Plastic Surgery, 2025)。
ただし、含まれた研究では患者背景、術式の細かな分類、追跡期間、満足度や合併症の評価方法にばらつきがあり、両術式を直接比較したデータには限界があります。
この数値だけから優劣を判断することはできません。
術式は、たるみの部位と程度、皮膚やSMASの状態、既往の手術、医師の経験を踏まえて個別に検討されるものです。
術式ごとの特徴と回数への影響
代表的な術式の特徴を、回数を考える視点から表に整理しました。
数値ではなく傾向としてご覧ください。
| 術式 | 主な操作 | 剥離範囲 | 回数を考えるうえでの留意点 |
|---|---|---|---|
| ミニリフト | 短い切開で皮膚を中心に引き上げる | 限定的 | 繰り返すと皮膚の余力が減りやすい |
| SMAS法 | SMASを剥離・移動、または切除・縫縮して処理する | 術式により限定的~広範囲 | 処理の方法により深い層にも瘢痕が及ぶ |
| より深い層で操作する術式 | 皮膚とSMASを一体で移動させる | 広範囲 | 高い技術を要し、再手術の計画も複雑になる |
| 部位を限定した手術 | 首や額など特定部位に絞る | 部位による | 顔全体のバランスとの整合が必要 |
より深い層で操作する術式については、SMAS法との違いを含めて別の記事で詳しく取り上げています。
回数を重ねる前に考えておきたい治療計画

再手術を検討する段階では、目の前の1回だけでなく、その先も含めた計画として考えることが後悔を減らします。
ここでは判断の材料になる視点を挙げます。
1回あたりの費用だけで判断しない
治療を比較するとき、1回あたりの金額に目が向きがちです。
しかし、判断材料はそれだけではありません。
ダウンタイムの長さと回数、術後の通院、将来的に追加の治療が必要になる可能性、そして手術で対応できる範囲まで含めて考える必要があります。
切開リフトは組織を直接操作する外科手術であり、切らない施術とは、ダウンタイム、リスク、対応できる変化の範囲が異なります。
目的も作用の仕組みも違うため、効果の感じ方や次の治療を検討する時期には個人差が大きく、持続期間の長短だけで単純に比較できるものではありません。
切開リフトであっても効果が永久に続くわけではなく、追加の治療や再手術が検討される場合があります。
費用の考え方については、こちらで詳しく整理しています。
手術以外の選択肢を組み合わせる考え方
切開リフトが作用する範囲は術式と切開範囲によって異なりますが、一般には下顔面から首にかけての下垂(組織が下方に垂れ下がること)を対象とすることが多く、輪郭の印象の改善が期待できます。
一方で、目の下のくぼみや頬骨部のボリューム低下といった変化は、組織を引き上げるだけでは対応しきれないことがあります。
こうした部分には、ヒアルロン酸などの注入治療や、脂肪量が多い場合の小顔脂肪吸引といった別のアプローチを組み合わせることが検討される場合があります。
ただし、これらの治療にもそれぞれ固有のリスクと副作用があります。
注入治療では、まれではあるものの血管内に製剤が入ることによる皮膚障害や視覚障害などの重篤な合併症が、脂肪吸引では内出血、感染、皮膚の凹凸、左右差、感覚異常などが起こる可能性があります。
「手術より負担が軽い選択肢」と一括りにせず、適応、費用、リスク、ダウンタイムを施術ごとに確認したうえで判断してください。
体質と生活習慣が経過に与える影響
手術後の経過や効果の持続には、生活習慣も関わります。
紫外線対策と保湿を続けること、喫煙を避けること、体重の急激な変動を避けることは、皮膚の状態を保つうえで意味を持ちます。
特に喫煙は、傷の治りや皮膚の血流に影響することが知られており、手術前後の一定期間は控えることが求められます。
こうした点は、ご自身で管理できる数少ない要素でもあります。
医師に確認しておきたいこと
再手術を相談する際は、次のような点を具体的に質問してみてください。
想定している術式と剥離範囲、前回の手術歴を踏まえた難易度の見立て、期待できる変化と難しい部分、起こりうる合併症とその対応方針、ダウンタイムの目安と復帰までの期間です。
限界やリスクについても率直に説明があるか、質問に対して具体的な回答が返ってくるかは、判断の手がかりになります。
クリニックを選ぶ際は、医師の経歴や症例に関する情報、合併症が生じた場合の対応方針が明確に示されているかどうかも、あわせて確認するとよいでしょう。
医師選びの観点については、別の記事でまとめています。
当院が行っている切開リフトの内容については、施術ページで詳しくご確認いただけます。
当院での切開リフトのご相談について

当院では、小顔脂肪吸引およびリフトアップに関する診療とご相談を行っています。
切開リフトの回数や再手術についても、既往の施術、皮膚と組織の状態、全身状態を診察したうえで、適応を個別に判断しています。
院長が一貫して担当する体制
当院では、カウンセリングから手術、術後の診察までを院長が担当しています。
再手術では、前回の手術で何が行われたかを踏まえた計画が必要になります。
そのため当院では、カウンセリングで確認した内容をそのまま手術計画と術後の説明に用いる進め方をとっています。
施術歴を踏まえた適応の見きわめ
ご相談の際は、前章でお伝えした施術歴の情報をお聞かせいただいたうえで、皮膚の余力、組織の可動性、傷跡の状態を診察し、手術で対応できる部分と、別の方法を検討したほうがよい部分を分けてご説明します。
手術をお勧めしないほうがよいと判断した場合には、その理由もお伝えします。
術後の経過についてのご説明
当院では、SMASを操作するフェイスリフトを基本とし、固定バンドや抜糸を必要としない設計を採用しています。
適応は切開範囲、皮膚と組織の状態、再手術歴などによって異なります。
固定バンドや抜糸が不要な場合でも、手術に伴うリスクがなくなるわけではありません。
腫れ、内出血、痛み、一時的な感覚の鈍さ、傷跡、左右差、血腫、漿液腫、感染、創傷治癒不良、皮膚の血流障害、顔面神経の障害、皮膚壊死といった合併症が起こる可能性があり、想定した効果が得られず再手術を検討することもあります。
腫れや内出血の程度と続く期間、日常生活への戻り方の目安は、術式や剥離範囲、体質によって差が出ますので、診察時に想定される経過を具体的にご説明します。
また、術後に腫れや痛みが急速に強くなる、片側だけが著しく膨らむ、息苦しさや発熱がある、傷の部分の色調が変わるといった変化がみられた場合は、次の診察を待たずにご連絡ください。
血腫や感染など、早期の対応が必要な状態の可能性があります。
当院の切開リフトの治療内容と費用について
切開リフトは公的医療保険が適用されない自由診療です。
治療回数は通常1回で、術後は経過に応じた診察を行います。
切開の範囲、麻酔の方法、再手術の難易度、併用する処置の有無によって治療内容が変わり、費用もそれに応じて異なります。
特に再手術では、前回の術式や瘢痕の状態によって計画が変わるため、診察後に個別のお見積もりをご案内します。
主なリスク・副作用は前項に記載したとおりで、現れ方には個人差があります。
標準的な費用、費用に含まれる項目と含まれない項目(診察料、麻酔代、薬代、検査費など)、追加費用が発生する条件については、施術ページに掲載しています。
切開リフトの回数に関するよくある質問

ここでは、回数や再手術について実際にいただくことの多いご質問にお答えします。
いずれも一般的な考え方であり、個別の判断は診察のうえで行います。
2回目は初回と同じ切開線を使うのですか
多くの場合、前回の傷跡を含めて切開し、傷跡を新たに増やさないよう計画します。
前回の傷跡が目立っている場合は、その部分を切除して縫い直すことで、傷跡の状態が整うことがあります。
ただし、必要な引き上げの方向や範囲によっては、切開線を延長したり位置を調整したりすることがあります。
傷跡がどの程度目立たなくなるかには個人差があり、確実な結果を保証できるものではありません。
糸リフトを何度も受けていますが切開リフトは可能ですか
多くの場合、検討することは可能です。
ただし前述のとおり、糸リフトを繰り返した経過によっては、剥離が難しくなる場合があります。
受けた時期、回数、糸の種類がわかる資料があれば持参してください。
情報が多いほど、手術計画の精度が上がります。
何歳まで受けられますか
年齢の上限が一律に定められているわけではありません。
ただし、加齢に伴って皮膚の厚みや弾力、傷の治りに関わる条件が変化することがあるため、全身状態を含めた慎重な判断が必要になります。
50代、60代で手術を受ける方は少なくありませんが、判断の基準は年齢そのものではなく、皮膚と組織の状態、持病の有無、服用中のお薬などの総合的な評価です。
年代別の適応については、こちらの記事で詳しく整理しています。
手術ではなく他の方法で対応できませんか
たるみの程度や気になっている部位によっては、手術以外の方法が適している場合があります。
反対に、組織の下垂が進んでいる状態では、切らない施術だけで対応するのが難しいこともあります。
どちらが適しているかは診察で判断します。
ご希望をうかがったうえで、対応できる範囲と難しい範囲を率直にお伝えします。
前回の手術記録が手元にありません
記録がなくても相談は可能です。
受けた時期とおおよその施術名、傷跡の位置から、ある程度の推測は立てられます。
ただし、記録がある場合と比べて事前の計画に不確実な部分が残るため、術中の所見に応じた判断が増えます。
可能であれば、手術を受けた医療機関に問い合わせて記録を取り寄せることをご検討ください。
カウンセリング当日の流れや、その場で確認しておきたい事項については、別の記事にまとめています。
まとめ

糸リフトやハイフを繰り返してきた方も、すでに切開リフトを受けた方も、次の一手を考えるときに知りたいのは「あと何回できるのか」ではなく、「これから先をどう組み立てるか」ではないでしょうか。
切開リフトの回数について、すべての方に共通する上限や時期の基準はありません。
実際には、過去の皮膚切除量、現在の皮膚のゆるみと質、瘢痕や癒着、血流、前回の術式、全身状態といった条件の組み合わせによって、次の手術で安全に行える範囲が変わります。
単一施設の報告では初回から2回目までの間隔が平均9.0年とされていますが、これは個々の方の再手術の時期や効果の持続を保証する数字ではありません。
再手術は瘢痕や癒着によって難易度が上がる一方、合併症の頻度が初回と大きく変わらなかったとする報告もあり、難しさとリスクは切り離して考える必要があります。
判断の材料は費用の一面だけではありません。
ダウンタイム、起こりうる合併症とその対応方針、将来必要になるかもしれない治療、そして手術で対応できる範囲と難しい範囲まで含めて総合的に見ることが、後悔の少ない選択につながります。
過去の手術、糸リフト、ハイフ、注入治療の内容をできる限り正確に共有することも、安全性を左右する重要な要素です。
効果や持続期間、ダウンタイムの現れ方には個人差があり、切開リフトの効果が永久に続くわけでもありません。
本記事の内容は結果を保証するものではありません。
当院では院長がカウンセリングから手術、術後の診察までを担当し、これまでの施術歴と現在の状態を確認したうえで、手術が適しているかどうかを見きわめています。
回数や時期に迷っている段階でも構いませんので、まずは診察でご自身の状態を確認することから始めてみてください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、診断や治療を保証するものではありません。
切開リフトは公的医療保険が適用されない自由診療です。
効果・持続期間・ダウンタイム・リスクの現れ方には個人差があり、記載した内容がすべての方に当てはまるものではありません。
施術の適応は診察のうえで判断いたします。
標準的な費用、費用に含まれる項目、主なリスク・副作用の詳細は施術ページに掲載しています。
▶ ご相談・ご予約はこちらから
📍福岡天神美容クリニック
🕊 ご予約・ご相談は以下からどうぞ
▶︎ LINE公式アカウント:https://lin.ee/tXa7oWn
📞 お電話もお気軽に 0924015012
Google Map:https://maps.app.goo.gl/rniFAYrzatgrbHMC9

記事執筆:福岡天神美容クリニック 院長 小林 直樹
小顔・輪郭専門医として、ダウンタイムを最小限に抑えた施術に注力。糸リフト、脂肪吸引、切開リフトなどで「腫れにくさ」「自然な仕上がり」を追求してきました。
これまでに顔の脂肪吸引だけで累計4,500件以上、総症例数は1万件超を経験。2024年には年間脂肪吸引症例数 日本一を獲得するなど、豊富な実績に裏打ちされた確かな技術を持ちます。
また、二重整形やくまとり、眉下切開、たれ目形成などの目元治療、ヒアルロン酸・ボトックス注入などの若返り治療も得意分野。丁寧なカウンセリングと万全のアフターフォローで、患者様一人ひとりに寄り添った美容医療を提供しています。
「安心して任せられる美容医療」を信条に、理想の美しさと満足をお届けいたします。
【所属学会】
・日本美容外科学会(JSAS)
・アラガンボトックス認定医
・ジュビダームビスタ認定医
【参考・外部リンク】










