糸リフトやハイフを重ねてきた方から、以前ほど変化を感じにくくなったというご相談をいただくことがあります。
そうした方がフェイスリフトについて調べはじめると、多くの場合ここで手が止まります。
SMAS法、MACS法、ディーププレーンリフト、エクステンデッドディーププレーン、コンポジットリフトと、術式の名前が次々と出てくるためです。
なかでもディーププレーンリフトは、深い層から引き上げる術式として紹介されることが多く、名前だけが先行して伝わりやすい施術でもあります。
しかしこの言葉が指しているのは、効果の強さの等級ではなく、手術で剥離する層がどこかという解剖学上の区別です。
剥離とは、組織と組織の境目を剥がして、動かせる状態にする操作のことをいいます。
顔の皮下には、皮膚、皮下脂肪、SMAS、その下の深部脂肪と深層の筋膜、そして骨という層構造があり、どの層まで手を入れるかによって術式の名前が変わります。
SMASとは、顔の皮下に広がる線維性・筋性の支持組織のことで、表情筋や首の広頸筋と連続しています。
ディーププレーンとは、このSMASのさらに深い側にある層のことを指します。
そこで本記事では、ディーププレーンリフトを検討している方に向けて、判断に必要な材料を順に整理します。
剥離する層とリガメント(靭帯)の解剖、SMAS法との具体的な違い、公表されている研究で報告されている満足度と合併症、顔面神経を含むリスク、ダウンタイムと費用の考え方までを、公的な情報と学術文献にもとづいて解説します。
あわせて、当院である福岡天神美容クリニックがどの術式を採用しているのかについても、はじめに明確にしておきます。
先にお伝えしておくと、当院が行っているのはFTB式SMASフェイスリフトであり、ディーププレーンリフトという名称のメニューは設けていません。
【記事執筆】福岡天神美容クリニック 院長 小林直樹
ディーププレーンリフトとSMAS法の違いを一目で整理する

細かい解剖の話に入る前に、両者の位置づけを一枚の表で確認しておきます。
ここで全体像をつかんでおくと、この後の解説がつながりやすくなります。
なお、ディーププレーン法も広い意味ではSMASを扱うフェイスリフトの一種で、実際に学術文献でも両者は同じ「SMASフェイスリフトの術式群」として分類されています。
そのため本記事では便宜上、SMASを縫い縮めたり折りたたんだりして引き上げる従来型の術式をまとめて「SMAS法」と呼びます。
| 比較項目 | 従来型SMAS法(SMASの縫縮・折りたたみなど) | ディーププレーン法 |
|---|---|---|
| 剥離する層 | 皮膚の下を剥がし、SMAS層を別に処理する | SMASのさらに深い側(SMASと耳下腺咬筋筋膜の間)を剥離する |
| 引き上げる単位 | 皮膚とSMASをそれぞれ引き上げる | 皮膚とSMASを一体(複合皮弁)のまま移動させる |
| リガメントの処理 | 術式と範囲により異なる | 術式の設計に応じて頬骨・上顎・咬筋・下顎などの靭帯を解放する |
| 主に想定される変化 | フェイスラインとほほのたるみ | 中顔面と鼻唇溝(ほうれい線)を含む軟部組織の位置移動 |
| 皮膚の縫合 | 皮膚側にも張力がかかりうる | 筋膜層で吊り上げ、皮膚は無緊張で閉じる設計 |
| 技術的な難易度 | 標準的とされる | 顔面神経の走行を熟知した高度な技術が必要とされる |
| 剥離範囲 | 術式と範囲により変動する | 広くなりやすいが、実際の範囲は設計による |
| 元に戻せるか | いずれも受ける前の状態には完全には戻せない | 同左(剥離範囲が広い分、修正はより難しくなる) |
この表からわかるとおり、両者は強さの等級が違う施術ではなく、手術で入っていく層と、動かす組織の単位が異なる術式です。
なお、いずれの術式も効果や経過には個人差があり、結果を保証するものではありません。
切開を伴うフェイスリフトには、腫れ、内出血、血腫、漿液腫、感染、創傷治癒不良、瘢痕、皮膚の血行障害、顔面神経への影響、再手術が必要になる可能性といったリスクがあります。
詳細は本記事の「ディーププレーンリフトのリスク・合併症と顔面神経」で整理しています。
フェイスリフト全体の分類をまだ把握していない方は、先にフェイスリフトの種類を解説した記事に目を通しておくと、本記事の内容が理解しやすくなります。
ディーププレーンリフトとは|SMASの深い側を剥離する切開リフト

まず、この術式が顔のどこに、何をしているのかを整理します。
ここを正確に押さえておくと、クリニックごとの説明の違いにも惑わされにくくなります。
「ディーププレーン」が指している層
ディーププレーン(deep plane)とは、外側の中顔面ではSMASと耳下腺咬筋筋膜の間にあり、内側では表情筋の浅い側にある層のことを指します。
これは米国国立医学図書館が公開する医学教育データベースのDeep Plane Faceliftに記載されている定義です。
耳下腺咬筋筋膜とは、耳下腺、咬筋という噛むための筋肉、頬脂肪体、そして顔面神経を包んでいる膜のことをいいます。
同資料では、SMASと耳下腺咬筋筋膜の間には自然な滑走面が存在するとされています。
つまり、ディーププレーンとは新しく作り出す空間ではなく、もともと組織が滑り合っている面に沿って剥離を進める層です。
そして顔面神経の枝は、この耳下腺咬筋筋膜の中や剥離する面の深部と周辺に存在し、SMASより深い層を走行します。
そのため手術では、牽引や熱による損傷を避けながら剥離を進める必要があります。
なお、同資料には複数の変法が報告されていると記載されており、この層に入る位置の目安についても、下顎角から外眼角に向かう線という記載と、下顎角の少し上から頬骨隆起に向かう線という記載の両方が用いられています。
つまりディーププレーン法は一つの決まった手順として固定されたものではなく、術者によって設計に幅がある術式です。
また、顔の層構造やSMASの連続性は部位によって異なるため、以下の説明はあくまで全体像の整理としてお読みください。
皮膚とSMASを一体で動かす複合皮弁
ディーププレーン法の考え方は、1990年にSam Hamra医師が報告した術式に由来します。
前掲の資料では、この術式は皮膚とSMASを一体の複合皮弁として、SMASより深い層で挙上するものだと説明されています。
利点として同資料が挙げているのは、皮弁の血流が改善すること、頬の脂肪組織(マラーファットパッド)を移動させて鼻唇溝に対応できること、主要な保持靭帯を直接切離できること、頬脂肪体の突出にアプローチできることの4点です。
さらに、吊り上げの糸を筋膜の層だけに置くことで、皮膚を張力のない状態で閉じられるとされています。
皮膚を引っ張って縫い縮めるのではなく、深い層で位置を決めるという設計思想が、この術式の中心にあります。
エクステンデッドやコンポジットとの違い
検索していると、エクステンデッドディーププレーンやコンポジットリフトという名前も目にします。
エクステンデッドは、剥離の範囲をより内側や下方へ広げた設計を指して使われることが多い呼び方です。
ただし標準化された単一の定義があるわけではなく、用語の使い方や実際の操作範囲は術者や文献によって異なります。
一方でコンポジットフェイスリフトは、前掲の資料においてディーププレーン法に上下まぶたの操作を組み合わせた全顔の術式として説明されています。
眼輪筋などを皮弁に含めて一体で移動させることから複合(コンポジット)と呼ばれており、剥離の範囲はさらに広がります。
同じ言葉が異なる意味で使われている場面があるため、クリニックの説明を読むときは、名称ではなく実際に何をどこまで行うのかを確認することが大切です。
たるみが生じる層構造とリガメントの役割

ディーププレーン法がなぜ靭帯の処理を重視するのかは、顔の支持構造を知ると理解しやすくなります。
ここは糸リフトやハイフで変化を感じにくくなる理由とも直結する部分です。
顔は層で重なっている
顔は表面から順に、皮膚、皮下脂肪、SMAS、その下の深部脂肪と深層の筋膜、そして骨という層で構成されています。
ただし、それぞれの層の厚みやSMASの連続性は顔の部位によって異なり、どこでも同じ構造をしているわけではありません。
加齢によって、皮膚の弾力が低下し、脂肪が萎縮しながら下方へ移動し、SMASを含む支持組織がゆるみ、骨の形も少しずつ変化していきます。
たるみは、このうちのどれか一つではなく、複数の層の変化が重なって生じます。
そのため、皮膚の表面だけを引き上げるリフトアップでは、深層の支持組織のゆるみに対応しきれない場合があります。
つまり、どの層に働きかける施術かによって、変えられる範囲が決まります。
たるみの原因層について詳しく知りたい方は、SMASフェイスリフトの効果とメカニズムを解説した記事もあわせてご覧ください。
皮膚と深部組織をつなぎとめる保持靭帯
顔には、皮膚と深部の組織をつなぎとめている保持靭帯(リガメント)と呼ばれる線維性の構造があります。
前掲のDeep Plane Faceliftの資料では、顔の軟部組織を十分に移動させるには、これらの靭帯を切離する必要があるとされています。
同資料が挙げているのは、最も強靭とされる頬骨靭帯、そして上顎靭帯、咬筋靭帯、下顎靭帯です。
咬筋靭帯は咬筋の前縁に位置し、鋭的に解放したうえで口角の方向へ剥離を進めると記載されています。
頬骨靭帯は大頬骨筋の浅い側をたどりながら解放され、この操作は大頬骨筋を深部から支配する顔面神経の枝を保護することにもつながるとされています。
下顎靭帯の解放については、フェイスラインのもたつき(ジョウル)の改善に不可欠だと明記されています。
そして同資料は、これらの靭帯を解放しないと、鼻唇溝、マリオネットライン、目の下のくぼみ(ティアトラフ)、ジョウルの改善が大きく制限されるとしています。
ただし、どの靭帯をどの範囲まで解放するかは、術式の設計や患者さんの状態によって異なり、すべてのディーププレーン法で同じ操作が行われるわけではありません。
糸やハイフでは届きにくい理由
糸リフトは、皮下の層に糸を通して組織を引き上げる施術です。
ハイフは、超音波の熱エネルギーを特定の深さに集めて、組織に働きかける機器治療です。
どちらも皮膚を切開しないという利点がありますが、保持靭帯そのものを切離したり、余った皮膚を切除したりする施術ではありません。
繰り返し受けても以前ほど変化を感じにくくなる場合、施術の質だけでなく、悩みの主な原因がその施術の対象とする層の外にある可能性も考えられます。
糸リフトとの比較を詳しく知りたい方は、糸リフトと切開リフトの違いを解剖学的に解説した記事が参考になります。
ディーププレーンリフトに期待されている変化と限界

ここでは、この術式に何が期待され、何が期待できないのかを整理します。
期待の範囲を正確に知っておくことが、後悔を避ける最も確実な方法です。
報告されている変化の方向性
ディーププレーン法は、頬の脂肪組織を含めた中顔面のボリュームを移動させる設計であるため、鼻唇溝やジョウルへの対応が語られることの多い術式です。
前掲の資料では、適応として、頬の脂肪組織の下垂、鼻唇溝、ジョウルなどが挙げられています。
なお、頬骨部に生じるたるみ袋(マラーマウンド)については、上下まぶたの操作を加えたコンポジットフェイスリフトで軽減しうるとされています。
ただし、ここで挙げられているのは適応であって、どの方にも同じ変化が生じるという意味ではありません。
たるみの進行度、皮膚の厚み、骨格、年齢によって、得られる変化には個人差があります。
この術式でも変わらないもの
一方で、外科的な引き上げでは変化させにくい要素もあります。
皮膚そのものの質感、色ムラ、細かい小じわ、毛穴といった肌の状態は、位置を移動させる手術の対象ではありません。
また、骨格そのものの形や、加齢に伴う骨の変化も、リフトの手術で変えられるものではありません。
手術を受けた後も加齢による変化は進むため、状態が固定されるわけではない点も理解しておく必要があります。
「深い層まで剥がせば効果が強い」とは限らない
剥離を深く広くするほど結果が良くなるかどうかは、現時点の研究では確定できていません。
後述する2019年のメタアナリシスでは、術式は合併症の少なさではなく結果の質で選ぶべきだと結論づけられています。
言い換えれば、術式の名前そのものが仕上がりを保証するわけではないということです。
たるみの状態と骨格に対して、どの範囲をどう処理するかという判断のほうが結果に直結します。
剥離する範囲による違いについては、ミニリフトとフルリフトの違いを解説した記事でも整理しています。
研究で報告されている満足度と合併症

ここからは、公表されている研究にもとづいて数字を確認します。
いずれも海外の文献で報告されている数値であり、特定のクリニックの実績を示すものではありません。
2025年に公表された2つの系統的レビュー
2025年に、ディーププレーン法とSMAS法を比較した系統的レビューが2本公表されています。
1本目は、47の研究と10,766例を対象に合併症率をまとめたレビューです。
この研究では、血腫の発生率がディーププレーン法で3パーセント、SMAS法で2パーセントと報告されています。
神経損傷の発生率は両群で同程度であり、報告された神経損傷の多くは一時的で時間とともに回復し、永久的な神経損傷はまれだったとされています。
両術式を直接比較した研究は47件中わずか1件で、その1件では中顔面の若返りについてディーププレーン法が優れていたと報告されています。
ただし著者らは、比較データが乏しく評価指標も研究ごとに異なるため、優劣について確定的な結論は出せないと明記しています。
2本目は、21の研究と2,896例を対象に、患者さんの満足度をまとめたレビューです。
こちらでは、総合的な満足度がディーププレーン法で94.4パーセント、SMAS法で87.8パーセント、合併症率はディーププレーン法で17.2パーセント、SMAS法で10.3パーセントと報告されています。
これらはいずれも主に観察研究を統合した推定値であり、患者さんの背景、手術の範囲、併用した施術、追跡期間、合併症の定義、満足度の測り方が研究ごとに異なります。
つまり、特定の患者さんに起こる確率や、得られる結果を示す数字ではありません。
この数字をそのまま比較できない理由
満足度の数字だけを見ると、ディーププレーン法のほうが優れているように見えます。
しかし2本目のレビューは、両術式を直接比べた比較試験ではなく、それぞれの群の報告値を並べて集計した形式の解析です。
つまり、対象となった患者さんの年齢やたるみの進行度、術者の経験、評価の方法がそろっていない状態での数字であり、そのまま優劣の根拠にはできません。
このレビュー自身も、結論としては両術式とも高い満足度と長期的な結果が得られているという表現にとどめています。
さらに、1本目の3パーセントは血腫だけの数値、2本目の17.2パーセントは合併症全体の数値ですので、この2つを並べて比較することもできません。
術式ごとの合併症を比較した2019年のメタアナリシス
183の研究を対象に、SMASの処理方法別に合併症率を比較した2019年のメタアナリシスもあります。
この研究では、一時的な顔面神経の障害が最も高かったのはハイラテラルSMAS法で1.85パーセント、次いでコンポジットリフトで1.52パーセントでした。
一方で、永久的な神経損傷のリスクには術式間で差がなかったと報告されています。
大きな血腫については、SMASを縫い縮める方法を基準とした解析で、ディーププレーン法の1.22パーセントとSMASの折りたたみ法の1.92パーセントが統計学的に高いという結果でした。
皮膚壊死については、SMASフラップ法が1.57パーセントと高い結果です。
つまり、どの術式にも固有のリスクの偏りがあり、ディーププレーン法が一律に安全でも一律に危険でもないということです。
この研究の結論は、術式は合併症の起こりやすさではなく結果の質にもとづいて選ぶべきだというものでした。
これは安全性を軽視してよいという意味ではありません。
たるみの部位、皮膚の状態、既往歴、術者の経験、ご本人の希望と、それぞれのリスクを合わせて検討する必要があるという趣旨として読んでください。
2026年に公表された直接比較の研究
2026年には、同じ術者が担当した166例を対象に、ディーププレーン法とSMASを縫い縮める方法を前向きに比較したコホート研究が公表されました。
2019年1月から2024年12月に手術を受けた方が対象で、ディーププレーン法が45例、SMASを縫い縮める方法が121例です。
この研究では、患者さんの満足度、若返りの評価、回復期間、合併症の発生率のいずれにも統計学的な差は認められませんでした。
回復期間は中央値で25.5日と30日、一時的な顔面神経の動きの低下はディーププレーン法で11.1パーセント、SMASを縫い縮める方法で12.4パーセントという結果です。
著者らは、追跡期間の中央値が3か月と短いこと、2群の症例数に差があること、検証された評価尺度を用いていないことを限界として挙げています。
そのうえで、結果は術式そのものよりも、術者の技量と患者さんの選択によって大きく左右されると述べています。
ディーププレーンリフトのリスク・合併症と顔面神経

ここでは、実際に生じうる合併症を整理します。
以下の数値は、前掲のDeep Plane Faceliftの資料に記載された海外での報告値です。
顔面神経への影響
ディーププレーン法における顔面神経の損傷は1パーセント未満とされ、永久的な障害はきわめてまれだと記載されています。
ただし、報告によって定義も頻度も異なります。
前述の2026年の研究のように、一時的な顔面神経の動きの低下まで含めると11.1パーセントという、これより高い頻度を報告した研究もあります。
剥離を進める床の部分に顔面神経の枝が走行しているため、皮弁側に引き上げてしまったり、牽引や電気メスで傷つけたりしないことが求められます。
前頭枝の走行の目安としては、耳珠の0.5センチ下から眉尾の1.5センチ上に向かう線が広く用いられています。
神経の枝によって症状は異なり、頬筋枝では口角や上唇の動きが弱まり、下顎縁枝では下唇の動きが左右で異なって見えることがあります。
前頭枝では眉を上げる動きが弱まり、頬骨枝では閉眼が不十分になることがあります。
同資料では、麻酔から覚めた直後の麻痺は局所麻酔の効果が続いているだけの場合が多く、12時間から24時間は経過をみるとされています。
また、術中に顔面神経の状態を確認できるようにするため、筋弛緩薬を使わない方針がとられることも記載されています。
最も損傷頻度が高いのは大耳介神経
意外に思われるかもしれませんが、フェイスリフトで最も損傷が多い神経は顔面神経ではなく大耳介神経です。
この神経は外耳道のおよそ6.5センチ下方で胸鎖乳突筋を横切って走行しており、損傷は最大で7パーセントに生じるとされています。
損傷すると、耳たぶや耳の下方、耳の後ろの首の感覚が鈍くなります。
永続することもありますが、多くは数週間から数か月かけて自然に回復すると記載されています。
その他の合併症
同資料では、血腫は2パーセント未満、漿液腫は4パーセント、皮膚の虚血や脱落は1パーセント未満、感染は1パーセント未満と報告されています。
皮膚の虚血や脱落は耳の前の部分に最も多く、ディーププレーン法では皮弁の血流が比較的保たれるため、SMASフラップ法より頻度が低いと考えられるとされています。
そのほか、耳たぶの変形、切開部の脱毛、食事の最初の一口で耳の前に痛みが生じるファーストバイト症候群などが挙げられています。
切開リフト全般のリスクを網羅的に確認したい方は、切開リフトのデメリットとリスクをまとめた記事もご覧ください。
事前の確認が必要な方
血腫のリスクを高める要因として、抗凝固薬や抗血小板薬、解熱鎮痛薬の一部の服用、一部のハーブやサプリメントの摂取、コントロールされていない高血圧が挙げられています。
これらの薬やサプリメントを自己判断で中止しないでください。
処方している医師と執刀する医師の双方に申告し、休薬の要否や代替の方法を確認する必要があります。
男性は女性の2倍、最大で8パーセントの血腫が生じるとされ、術後の収縮期血圧を140mmHg未満に保つことでリスクが下がると記載されています。
喫煙は、創傷の治り方や皮膚の血流に影響します。
禁煙の要否と期間はクリニックの方針によって異なりますので、喫煙されている方は必ず事前に医師へご相談ください。
妊娠中の方は、原則として美容目的の予定手術は延期を検討します。
授乳中の方は、麻酔や処方薬、授乳を再開できる時期への影響を含めて、個別に医師へご相談ください。
糖尿病などで治癒に影響が出る可能性のある方、ケロイド体質の方も、事前に医師へ必ず申告してください。
服薬や禁煙の準備については、切開リフトの術前注意点をまとめた記事で詳しく解説しています。
術後に速やかな相談が必要な症状
手術後に次のような症状があらわれた場合は、時間外であっても速やかに手術を受けた医療機関へ連絡してください。
急に腫れが強くなる、片側だけ強い痛みが続く、出血が止まらない、発熱がある、皮膚の色が明らかに変わる、顔の動きに急な異常が出る、息苦しさがあるといった症状です。
血腫のように、早い対応が必要になる合併症もあります。
受診の目安と連絡先は、手術前に必ず確認しておいてください。
ダウンタイムと術後の経過の目安

切開を伴う手術である以上、日常生活への影響は避けられません。
ここでは、文献からいえる一般的な留意点と、当院の場合の目安を分けて整理します。
ディーププレーン法の術後経過について文献からいえること
ディーププレーン法のダウンタイムが従来型SMAS法より長いかどうかは、現時点で確定していません。
前述の2026年の前向き研究では、回復期間は中央値で25.5日と30日で、統計学的な差は認められませんでした。
ただしこの研究は単一の術者による短期の追跡ですので、逆に「同じである」と断定できるものでもありません。
ダウンタイムは術式の名称だけで決まるものではなく、実際の剥離範囲、併用する施術、体質などによって異なります。
予定を立てる際は、担当する医師から自分の手術内容にもとづいた目安を聞いてください。
参考:当院のFTB式SMASフェイスリフトの通院と経過の目安
以下は、当院のFTB式SMASフェイスリフトを受けられた場合の経過の目安です。
ディーププレーン法の経過を示したものではありません。
| 時期 | 主に生じる症状と過ごし方の目安 |
|---|---|
| 手術当日 | 腫れと張り感が出はじめる。安静に過ごす |
| 2日目から3日目 | 腫れが強まり、黄色い内出血が出はじめることがある |
| 1週間 | 経過観察の来院。腫れが目立ちにくくなりはじめる |
| 2週間から3週間 | 内出血が落ち着いてくる。頭皮のツッパリ感が残る場合がある |
| 1か月 | 経過観察の来院。傷跡の赤みが徐々に引きはじめる |
| 2か月 | 経過観察の来院。輪郭が落ち着いてくる |
| 3か月から6か月 | 傷跡の赤みが引き、仕上がりが整っていく |
この経過はあくまで目安であり、剥離の範囲、体質、術後の過ごし方によって個人差があります。
仕事復帰の目安については、切開リフトのダウンタイムを日数で解説した記事を参考にしてください。
傷跡の経過が気になる方は、切開リフトの傷跡について解説した記事もあわせてご覧ください。
費用の考え方|総額と含まれる内容を確認する

フェイスリフトは公的医療保険が適用されない自由診療です。
そのため料金はクリニックごとに設定され、含まれる内容も統一されていません。
金額だけでは比較できない
表示されている金額に、麻酔料、薬剤費、術後の経過観察の費用、必要になった場合の再診料が含まれているかどうかは、クリニックによって異なります。
また、同じ名称の術式でも、剥離する範囲や併用する施術が異なれば、手術そのものの内容が変わります。
比較の際は、金額の大小ではなく、その金額に何が含まれ、どこまでの範囲を手術するのかまで確認してください。
費用に差が出る仕組みについては、切開リフトの費用相場を解説した記事で整理しています。
当院のFTB式SMASフェイスリフトの費用
参考として、当院の料金を掲載します。
以下は2026年8月時点のFTB式SMASフェイスリフトのページに掲載されている金額であり、改定される場合があります。
| 内容 | モニター価格 | 定価 |
|---|---|---|
| ロング(耳珠軟骨まで/FTBリフト2本込み) | 500,000円(税込550,000円) | 800,000円(税込880,000円) |
| エクストラロング(耳下まで/FTBリフト2本込み) | 800,000円(税込880,000円) | 1,200,000円(税込1,320,000円) |
| FTBリフト1本追加ごと | 40,000円(税込44,000円) | 60,000円(税込66,000円) |
施術時間は60分から80分を目安としています。
抜糸のための来院は不要ですが、1週間後、1か月後、2か月後に経過観察のためご来院いただいています。
表示の料金には、FTBリフト2本分が含まれます。
FTBリフトを追加する場合や、脂肪吸引などを併用する場合は、料金が変わります。
麻酔料、薬剤費、術前の検査、経過観察の費用が別途必要になるかどうかは、診察の際に必ずご確認ください。
モニター価格にも適用条件がありますので、あわせてご確認いただくようお願いいたします。
当院が採用している術式について

ここは誤解が生じやすい部分ですので、明確にお伝えします。
当院はFTB式SMASフェイスリフトを行っています
当院がリフト手術として提供しているのは、FTB式SMASフェイスリフトです。
これはSMAS層を処理する切開リフトであり、ディーププレーンリフトという名称のメニューは設けていません。
前述のとおり、この判断は術式の名称ではなく、実際の設計の内容で決まります。
そのため当院では、患者さまの状態に対して必要な範囲を診察で見極めたうえで、術式と切開幅をご提案しています。
抜糸と固定バンドを不要にした設計
FTB式SMASフェイスリフトは、抜糸のいらないSMAS切開リフトとFTBリフトを組み合わせた当院独自のセットメニューです。
FTBリフトを固定バンドの代わりに用いて組織を圧着し、安定させる設計としています。
そのため、固定バンドとドレーンを使用しない運用としています。
シャワー、洗顔、化粧は手術当日から可能で、美容院は2週間後からを目安としています。
ただし、術後の生活の制限や経過には個人差があります。
抜糸が不要な仕組みについては、抜糸なしの切開リフトを解説した記事で詳しく説明しています。
切開幅は2種類から医師が提案します
当院にはロングとエクストラロングの2つの切開幅があります。
どちらを行うかは、診察で皮膚の余り、たるみの部位、既往歴などを確認したうえで、医師が適応の有無とあわせてご提案します。
ロングは耳珠軟骨までを範囲とし、目元から顔の中央にかけてのたるみが対象です。
エクストラロングは耳下までを範囲とし、目元からほうれい線、口元のマリオネットラインまでのたるみが対象となります。
これらは対応を検討する範囲の目安です。
実際に変化が見込める部位や程度は、皮膚の余り、脂肪の量、骨格、過去に受けた手術などによって異なります。
切開幅の選び方については、ロングとエクストラロングの違いを解説した記事もご覧ください。
カウンセリングは医師が行います
当院ではカウンセラー制度を導入せず、医師によるカウンセリングを行っています。
FTB式SMASフェイスリフトの執刀は院長が担当します。
必要に応じて、脂肪吸引や糸リフトを組み合わせたご提案を行う場合もあります。
併用する場合は、手術時間、費用、ダウンタイム、生じうる合併症の種類や程度が変わりますので、その点もあわせてご説明します。
なお、状態によっては手術をおすすめしないという判断をすることもあります。
施術内容の詳細はFTB式SMASフェイスリフトのページでご確認いただけます。
カウンセリングで確認しておきたいこと

術式の名称ではなく、実際の内容を確認することが判断の精度を上げます。
診察の場で確認しておくとよい項目を整理します。
手術の内容についての確認事項
どの層をどの範囲まで剥離するのか、切開線がどこに入るのかは必ず確認してください。
自分のたるみの主な原因が、皮膚の余りなのか、支持組織のゆるみなのか、脂肪の量なのかを説明してもらうことも重要です。
そのうえで、提案された術式がなぜ自分に適しているのか、他の選択肢と比べてどうなのかを聞いてください。
費用とリスクについての確認事項
提示された金額に何が含まれ、追加費用が生じるのはどのような場合かを確認します。
起こりうる合併症と、その場合にどのような対応をとるのかについても、事前に聞いておくと安心です。
執刀する医師が診察をした医師と同じかどうかも、確認しておきたい項目の一つです。
当日の流れや質問リストは、切開リフトのカウンセリングで聞くべきことをまとめた記事で詳しく解説しています。
医師選びの基準については、名医の選び方を解説した記事で詳しくまとめています。
その場で決めなくてよい
切開を伴う手術は、受ける前の状態に完全には戻せません。
説明を聞いたうえで一度持ち帰り、納得してから判断することをおすすめします。
判断に迷う点があれば、複数の医師に相談することも選択肢の一つです。
ディーププレーンリフトに関するよくある質問

Q1. ディーププレーンリフトはSMAS法より効果が高いのですか
研究上、そのように断定できる状態ではありません。
前述のとおり、2025年に公表されたレビューでも、両術式を直接比較した研究は非常に少なく、確定的な結論は出せないと明記されています。
Q2. 剥離する層が深いほど長持ちしますか
剥離の深さと持続期間の関係を明確に示した比較研究は限られています。
持続の感じ方には、加齢の進行、皮膚の状態、生活習慣なども影響します。
Q3. 傷跡はどこに入りますか
一般的には、耳の周囲や髪の生え際など、目立ちにくい位置に沿って切開線が設計されます。
時間の経過とともに落ち着いていく傾向がありますが、完全に見えなくなるわけではなく、残り方には個人差があります。
Q4. 顔面神経の麻痺は必ず治りますか
必ず治るとは言えません。
前掲の資料では、ディーププレーン法における顔面神経の損傷は1パーセント未満で、永久的な障害はきわめてまれとされていますが、可能性がないわけではありません。
Q5. ダウンタイムはどのくらい見ておけばよいですか
当院のFTB式SMASフェイスリフトの場合、腫れは2週間から4週間かけて落ち着いていき、最終的な仕上がりは術後2か月から6か月を目安とします。
経過は術式の名称だけで決まるものではなく、実際の剥離範囲、併用する施術、体質などによって異なります。
Q6. 何歳から検討できますか
年齢よりも、たるみの進行度と皮膚の余り方が判断の中心になります。
なお、未成年の方の美容目的の外科手術は、身体的・心理的な成熟の程度、ご本人の意思、保護者の同意、手術以外の選択肢を含めて慎重に検討する必要があります。
年代別の考え方は切開リフトは何歳から受けられるかを解説した記事で整理しています。
Q7. 他院で受けた手術の修正は相談できますか
前回の手術で剥離された範囲や瘢痕の状態によって、対応できる内容は変わります。
前回の術式や受けた時期、瘢痕や皮膚の血流の状態によっては、対応できない場合や、段階的な治療になる場合もあります。
まずは診察で状態を確認する必要がありますので、フェイスリフトの修正について解説した記事もご参照ください。
Q8. 脂肪吸引と同時に受けられますか
脂肪の量と皮膚の余りの両方が気になる場合、併用が検討されることがあります。
適応の判断は診察のうえで行いますので、切開リフトと脂肪吸引の同時施術について解説した記事をご覧ください。
まとめ

ディーププレーンリフトとは、効果の等級を示す名前ではなく、SMASのさらに深い側の層を剥離する術式を指す解剖学上の呼び方です。
この層で皮膚とSMASを一体のまま動かし、術式の設計に応じて保持靭帯を解放することで、中顔面から鼻唇溝にかけての位置を移動させる考え方の術式です。
一方で、剥離を進める床の部分には顔面神経の枝が走行しており、術者には解剖への正確な理解が求められます。
公表されている研究では、満足度も合併症率もSMAS法と並べて報告されていますが、両術式を直接比較した研究はごくわずかで、優劣を断定できる段階にはありません。
2026年に公表された前向きの比較研究でも、満足度、回復期間、合併症の発生率に統計学的な差は認められませんでした。
そのため、術式の名称だけで選ぶのではなく、自分のたるみの原因がどの層にあり、どの範囲をどう処理する必要があるのかという観点で検討することをおすすめします。
当院である福岡天神美容クリニックが行っているのはFTB式SMASフェイスリフトであり、ディーププレーンリフトという名称のメニューは設けていません。
抜糸を不要とし、固定バンドとドレーンを使用しない運用としたうえで、ロングとエクストラロングの2つの切開幅から、診察で確認した状態に応じた範囲をご提案しています。
気になる点は診察の場で遠慮なくお尋ねください。
診察のご予約は、公式サイトのWEB予約またはLINE予約から承っています。
なお、フェイスリフトは公的医療保険が適用されない自由診療です。
施術の効果や経過には個人差があり、結果を保証するものではありません。
腫れ、内出血、血腫、漿液腫、感染、創傷治癒不良、瘢痕、切開部の脱毛や生え際の変化、耳周囲の変形、皮膚の血行障害、顔面神経への影響、大耳介神経の知覚障害、麻酔に伴うリスク、再手術が必要になる可能性といったリスクがあります。
抗凝固薬や抗血小板薬を服用中の方、出血傾向のある方、コントロールされていない高血圧のある方、糖尿病などで治癒に影響が出る可能性のある方、ケロイド体質の方、喫煙されている方は、事前に必ず医師へお伝えください。
服用中の薬やサプリメントを自己判断で中止せず、処方している医師にもご相談ください。
妊娠中の方については、原則として美容目的の予定手術の延期を検討します。
授乳中の方は、麻酔や処方薬の影響を含めて個別にご相談ください。
フェイスリフトの一般的な位置づけについては、日本形成外科学会が一般の方向けのページを公開しています。
リスクと費用の総額を十分に理解したうえで、ご検討ください。
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記事執筆:福岡天神美容クリニック 院長 小林 直樹
小顔・輪郭専門医として、ダウンタイムを最小限に抑えた施術に注力。糸リフト、脂肪吸引、切開リフトなどで「腫れにくさ」「自然な仕上がり」を追求してきました。
これまでに顔の脂肪吸引だけで累計4,500件以上、総症例数は1万件超を経験。2024年には年間脂肪吸引症例数 日本一を獲得するなど、豊富な実績に裏打ちされた確かな技術を持ちます。
また、二重整形やくまとり、眉下切開、たれ目形成などの目元治療、ヒアルロン酸・ボトックス注入などの若返り治療も得意分野。丁寧なカウンセリングと万全のアフターフォローで、患者様一人ひとりに寄り添った美容医療を提供しています。
「安心して任せられる美容医療」を信条に、理想の美しさと満足をお届けいたします。
【所属学会】
・日本美容外科学会(JSAS)
・アラガンボトックス認定医
・ジュビダームビスタ認定医








